相続対策シミュレーション


事業承継税制

 中小企業の経営権を親から子へ引き継ぐには、その会社が発行している非上場株式を後継者が相続により取得することが一般的です。しかし、優良企業であればあるほど承継する株式の価格が高くなり、後継者が多額の相続税を負担することが社会問題となっていました。

 事業承継税制では現在、特例措置により令和9年末までの贈与もしくは相続において、後継者が承継株式について負担すべき税金の支払いを全額猶予する制度が設けられています。これを計画的に実行するには、まず親から子へ会社の代表権をゆずり、そのあと一定数以上の株式を贈与することになります。

 ここでは、贈与税の納税猶予がいずれ相続に引き継がれることを前提として、相続税の納税猶予額をシミュレーションします。前社長の配偶者の有無や子の数を入力して、相続財産の価格をいろいろと試してみてください。


生命保険金と相続

 相続税がかかる財産には、亡くなられた方(被相続人)が持っている遺産としての「本来の相続財産」以外に、「みなし相続財産」というものがあります。「みなし」ということは、遺産ではないが契約上支払われる生命保険金や死亡退職金などを相続財産に含める、という意味です。

 生命保険金は「誰が保険料を負担したか?」によって税法上の取り扱いが異なります。被相続人が保険料を負担した場合はみなし相続財産となりますが、それ以外の方が負担した場合には所得税や贈与税の対象となります。

 本シミュレーションでは、被相続人が保険料を負担した場合の「みなし相続財産」について検討します。生命保険金には非課税枠があるとともに、配偶者の税額軽減との関係で相続税額が変化します。保険金を誰がどれくらい受け取るかによって税額がどのように変化するかをシミュレーションしてみてください。

 

≪シミュレーションにおける前提条件≫

 1)法定相続人は配偶者と実子で日本の居住者に限る。

 2)生命保険契約の保険料を被相続人が全額負担したものとする。

 3)生前贈与や相続時精算課税、多額の負債などが無い。

 4)相次相続控除や未成年者控除、小規模宅地等の特例などの軽減措置は無い。

 

≪入力について≫

配偶者を「無し」にチェックすると同時に配偶者の相続財産を入力したとしても、その値を無効なものとして相続税を計算します。

 


二次相続と小規模宅地等の特例

 夫婦のいずれかが先に亡くなる一次相続では、配偶者が取得する相続財産について大幅に相続税が軽減されます。あわせて、配偶者が居住用宅地(自宅の土地)を相続する場合にその評価額が減額されます。したがって、一次相続で配偶者が多くの財産を取得する傾向にあります。

 一方、配偶者が亡くなったときの二次相続では上記のような軽減措置が受けられないことも多く、さらに配偶者がもともと持っている財産(固有の財産)も加算されるため、相続税が高額になりがちです。したがって、一次相続の段階から二次相続を見越して遺産分割を検討する必要があります。

【一次相続】

 配偶者が居住用宅地を取得する場合は無条件で小規模宅地等の特例が受けられます。反対に、別居の子が取得する場合には受けられません。また、配偶者が取得する相続財産のうち一定額まで相続税が軽減されます。したがって、配偶者の取得分を多くすれば相続税が少なくなります。

≪小規模宅地等の特例≫

 居住用宅地のうち330㎡までの部分について評価額の80%が減額される。

≪配偶者の税額軽減≫

 配偶者が取得する財産のうち、配偶者の法定相続分または1億6千万円までは相続税が軽減される。

【二次相続】

 このシミュレーションでは子が小規模宅地等の特例を受けられない前提のため、一次相続で配偶者が居住用宅地を取得した場合にはその評価額がそのまま相続財産となります。また、配偶者が相続とは別にもともと持っている固有の財産も加算されます。したがって、一次相続よりも相続税が高くなる傾向にあります。

【シミュレーションの前提条件】

その1)相続人は配偶者と実子のみでいずれも日本の居住者である。

その2)小規模宅地等の特例の対象となる土地は居住用宅地のみである。

その3)相続人である子は別居もしくは持ち家に居住しているため、小規模宅地等の特例を受けられない。

その4)相続財産の他に生前贈与やみなし相続財産、多額の負債などは無い。

その5)相次相続控除や未成年者控除、納税猶予などの特別な軽減措置は無い。

その6)一次相続と二次相続との間で土地の評価額などは変わらないものとする。