第140号


令和7年4月発行

確定申告の御礼

 今年も2月17日から3月17日まで、所得税の確定申告期を迎え、慌ただしい日々を過ごしていました。この1ケ月で、所得税だけでなく贈与税・消費税の申告を約400件行いました。令和5年10月よりインボイス制度がスタートし、消費税課税事業者の場合、令和6年の1年間に受け取った請求書やレシートがインボイスの要件を満たしているかの確認や記載されている登録事業者番号が実在しているかの確認など、決算申告業務はかなり煩雑さを増しました。

当事務所ではJDL AI-OCRの仕訳入力システム及び確定申告入力システムを導入しています。AI-OCRは、通帳やレシート、医療費の領収書や寄付金控除に関する証明書などから必要な情報を抽出解析してオンタイムでデータを生成します。これにより入力業務を大幅に削減するとともにインボイスによる煩雑化が随分解消されました。また、申告納税者の皆様から、早期に資料を回収させていただくことにより、無事確定申告を終了することができました。皆様のご協力により心より感謝申し上げます。


相続税でAIが調査開始

 国税局は今年夏から実施する相続税の調査などに人工知能(AI)を活用するとしています。相続税の申告書や財産状況が分かる資料などをAIで分析し、申告漏れの可能性をスコア化して、調査対象者の選定を行います。2025年は団塊の世代がすべて75歳以上になるため相続件数も大幅に増加すると見込まれています。

≪AIでの分析対象≫

国税庁によると、AIでの分析対象となるのは2023年に発生した相続事案が中心になるそうです。具体的には、相続税の申告書や一定規模以上の資産を持つ人が提出する財産債務調書、海外送受金を記録した資料、生命保険の一時金の支払調書や金地金を売却した際の支払調書などをAIで分析します。過去に相続税で申告漏れなどが生じた案件から不正や申告ミスが生じる傾向を見つけ出し、AI分析のためのデータとして活用しています。分析結果に基づき、申告漏れのリスクを被相続人ごとに1~0の間でスコア化していきます。

(出典:2025314 日本経済新聞)

 イメージのように最終的には各地の国税局や税務署の担当者が選定するとのことです。国税庁の担当者曰く、「これまでベテラン職員の経験などに頼っていた部分をデータ化し、AIを活用することで効率的な選定が可能になり、浮いた時間でより深い調査を実施していきたい」と話しています。筆者はAIの活用自体は間違いなく税務調査の効率化につながるものの、税務職員の調査選定能力が弱まっていくのではと危惧しています。ただ結果として、各国税局や税務署が、税務調査に割く時間が確実に増加すると見込まれますので、本年度の夏以降の相続件数は確実に増加すると思われます。近年の相続税の調査等の状況も国税庁報道発表資料からもわかるように増加傾向にあります。

(国税庁報道発表資料より抜粋)

 相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)などを考慮すると相続財産が5千万円を超えるような方たちが調査対象になるケースが増える可能性が出てくると思われます。相続税は基本的に相続が生じた時にしか調査を実施しないためタイミングが限られてきますので、国税局・税務署はしっかり調査を実施したいという思いが強いです。今後は納税者側も入念な準備が必要になってくると思われます。税務上のリスクを回避するうえでも岡部会計事務所にご相談ください。


AIの進化

 202211月に公開されたChatGPTにより始まった生成AIブームですが、2024年は推論モデルといわれる「OpenAI o1」が発表され、AIはより論理的思考が強化されたものとなり、驚異的な進化を遂げています。実生活ではなかなか実感できませんが、どのような進化を遂げ、どのような方向に向かっているのでしょうか。

 

主な生成AI

名称

開発元

主な特徴

ChatGPT

OpenAI

人間らしい流暢な文章。文章作成、アイデア出し、翻訳、コード生成、学習サポートなど、オールラウンド。また物語を書いたり、詩を作ったりと、創造性も高い。

Claude

Anthropic

OpenAIの研究者が開発。テキストだけでなく画像も扱える。倫理的で透明性のあるAIを目指していて、誤情報や有害な回答を避ける設計。回答が慎重で穏やか。 カスタマーサポート、文章作成、教育用途が得意。

Grok

xAI

X(旧Twitter)」と連携。最新情報を反映できる。雑談、創造的な質問、最新情報の検索、プログラミング(特に速さ重視)が得意。他のAIよりもユーモアがある。

Gemini

Google

Googleのアプリと連携。テキストだけでなく、画像、音声、動画など複数のデータ形式を扱える。回答が簡潔で構造化されていて、事実ベースの情報を求める時に便利。データ分析、コード生成、Googleツールを使った作業、実世界の情報検索が得意。遊び心は少なめ。

 

 

黎明期~第三次AIブームへ

AI(Artificial Intelligence)の研究は1950年頃より行われていました。2010年代になり、コンピュータの高速化によりニューラルネットワークを使ったディープラーニングが実用的に可能となり、一気に普及することとなりました。ニューラルネットワークとは人間の脳の構造・機能を模倣したもの、ディープラーニングとはニューラルネットワークをつかって人間が持つ複雑な意思決定能力より一層精密にシュミレートできる技術です。これにより、例えば、膨大な量のトマトを一つ一つ写真に撮り、それぞれの甘さ、酸味、成熟度、香り、こく、などのパラメーターに得点を付けてAIに学習させることにより、写真からAIがトマトの味を判別できるようになりました。

 

ChatGPT(生成AI)の登場

膨大な文章を学習させて、人間のような文章を生成したり、質問に回答したりできるAIを「大規模言語モデル(Large Language Model、LLM」と呼びます。インターネットの普及により言語情報の大量収集が可能となったこと、半導体の技術進化により並列処理に必要なGPUを大量にコンピューターに組み込めるようになったこと、処理のパラメーター数を大幅に強化したことなどから言語のように複雑なものについても処理が可能となりました。

ChatGPTが登場し、AIの認知度が一気に普及することになり、一般の企業でも「LLM」を自社に取り入れるようになりました。例えば、日本経済新聞ではAIに自社の記事を学習させることにより、購読者の質問に対して過去の記事を整理してまとめて解説してくれます(現在β版)。よく企業のホームページに行くと、質問に答えてくれる「チャットポット」も「LLM」の搭載で自然な言語による対応が可能となってきています。

 LLMについては学習する内容が間違っていたりすると、もっともらしいが誤った回答をすることがあり(ハルシネーション)、学習した情報が古くてもそのまま回答してしまうという点が課題とされています。

 

2024年の進化

 「LLM」の処理プロセスのうち、論理的思考部分に特化し精度をあげたものが「推論モデル」と言われています。データを学習し、それをもとに新しいテキスト、画像、音声などを生成します。例えば、曖昧な質問をしても、それを補って精度の高い回答をしてくれます。冒頭で挙げた「OpenAI o1」は東大の入試問題の数学について合格上位レベルに達したと言われています。

推論モデルの登場が革命的な理由は狭いタスク専用のAIから、汎用性の高いAIとなったこと、実験的なAIが誰でも使えるツールになったこと、データを受け取って回答する受け身型から創造的な提案ができるようになったこと、などが挙げらえれます。例えば、体の症状を入力すると、診断や治療法を提案したり、契約書を解析してリスクを推論して警告したりできます。

 

AIの今後

AIの進化は物理的な分野に及んでいます。ロボットにAIを組み込むことにより、環境を理解し、行動を生成し、対話が可能となります。TESLA社は人型汎用AIロボット「オプティマス」を2024年発表しました。TechShare社が開発している小型ヒューマノイドロボット「unitreeG1」は人間と変わらない動きをします。本年はロボティクス元年となりそうです。

 AIが目指しているものはAGI(汎用人工知能)です。人間のようにあらゆる問題を解決できるAIが今後出現し、一人一人がパーソナルAIを持ち、生活になくてはならないものになっていくでしょう。

 

 このようなAIの進化はテレビや新聞では感じることができません。AIのことはAIに聞け、です。左のAIアプリをどれか、スマホに入れてみてください。そして「AIについて教えて ていねいにやさしくね」と聞いてみてください。(おすすめは「X」(旧Twitter)のGrokです)